

フューチャービジョン・社会が求めるテキスタイルとは?
藤原 大 FUJIWARA Dai
多摩美術大学 生産デザイン学科テキスタイルデザイン専攻 教授。 デザイナー/DDI. (DAIFUJIWARA DESIGN INC.)代表取締役。 中央美術学院国画系山水画科(中国北京)留学後、多摩美術大学卒業。湘南に事務所をかまえる。 コーポレイト(一般企業)、アカデミー(教育分野)、リージョン(地域活動)を活動フィールドに捉え、多岐にわたる創作活動は世界から高い評価を受けている。独自の視点を生かし、資生堂、日立製作所、良品計画、長瀬産業、Googleなど企業のオープンイノベーションにおける牽引役としても活動し国内外でのプロジェクトを実践する。 また、「光村図書美術1中学校教科書」「NHKデザインあ」などでも活動が紹介される。ニューヨーク近代美術館(MOMA)永久コレクション。毎日デザイン賞、グッドデザイン大賞を受賞。ハーバード大学や世界最大デザインコンファレンス「Design Indaba」ほか講演歴多数。多摩美術大学教授,東京大学生産技術研究所研究員、金沢美術工芸大学名誉客員教授などを務める。
※この回はアーカイヴ動画の公開は行いません。
●「テキスタイル」というフィールド
植物や動物の体毛などを通して古代から触れているもので、繊維に関する単位が示す通りとても細かい世界。
そのため、サイエンスやテクノロジーを適用していかざるを得ない不思議な存在でもある。
ますます領域を横断していくこれからの時代、テキスタイルを扱うならば分子、高分子レベルのことまで及ばないと、世の中の素材の責任者として新しい素材をインストールする責務が果たせない、というくらいの自負を抱くべき分野。
●サイエンスとエンジニアリング
PCの中で織られる布、作られる服やモデルまでも現れており、テキスタイル・デザインはメタ・バースで表現する時代に。
以前はエンジニアリング、情報系のリテラシーの高い一部の人のものだったが、今やそのノウハウは広く普及し、雪のように美しく降り注いでいる。
こうしてテキスタイル・エンジニアリングは新たな市場を生み出す。
万物の元を水に求めた古代ギリシアの哲学者タレスに倣い、藤原式に「テキスタイルは何でできている?」と問い「すべてのテキスタイルはただ一つの”もと”からできているに違いない。それは『ゴミである』」と考えた。
入口を考えるのではなく出口から考えてみるやり方。
リサイクル資源のテキスタイルとして、ガラス繊維、PETをモノマー化したポリエステル繊維があり、紙、そしてさらなる技術開発が必要なプラスチックなど、素材にできる可能性がある。
2021年、容器リサイクル法ができ、ポリエチレン系のビニール袋を回収・資源化しようとしているが、街の回収システムは未発達の状況。法を制定するのは国だが、自治体や企業、そして日常生活を送る一人ひとりの協力が必要。
●パラダイムシフト、求められるネイキッドなライフスタイル
「ネイキッド」は、裸の、無防備な、不毛な、といった意味を持つ。
環境危機が起きている現在、素肌感覚=ネイキッドで生きていた古代人に学び、現代における素肌感覚=軽い、美しい、贅肉のない、感性的な、といった意味でなく本質的に「ネイキッド」な生き方を考えるべき。
今やデジタル技術は進化して、人と人の距離だけでなく心も繋げてくれるようになり、浸透し、人の体の中へ関心が向かっているように感じる。
そうしたデジタル時代の「ネイキッド」だと感じられる表現(Nulbarich 3rd Album、Flying Tigerの雑貨商品など)も出てきている。
アメリカの科学哲学者トマス・クーンが唱えた科学史上の「パラダイムシフト」が起き続け、「Society5.0」を目指し「ムーンショット目標」を掲げるような時代に行うものづくり、デザイン・シンキングの実験として、「SPEED FLAT PROJECT」を企画した。
情報としてはすでにできている、「人は移動しながら生産できるか?」を試したもの。
さまざまな面で多様化する時代の中、倫理(エシカル)・生態系を、素材を扱うテキスタイルの分野ではもちろん、作る人も使う人も一緒に考えていかなくてはならない。
オンラインホワイトボードアプリのmiroを使ったSCREEN LAB.をオープンさせました。こちらは放課後も続く議論の場のようなものです。講義で示されたテーマ、問い、関連領域について気楽に意見交換することで、考察を深め、TDU学生のみなさんとともに新たな研究領域を切り開くことを期待しています。随時更新されますので、何度でもお立ち寄りください。